第10回JTUトライアスロン・パラトライアスロン研究会
2月6日(土)に『第10回JTUトライアスロン・パラトライアスロン研究会』に参加したよ。今年はZoomによるオンライン開催で、おまけに(2021年度だけでなく)2020年度のJTU*1登録会員も参加費無料。JTU登録会員以外は参加費1,000円。去年2020年は大会に参加できずにJTU会費払っただけだったので、この機会を有効活用した。
何回か(2回か3回)に分けて投稿するね。
特別講演
- 時間:13:10-14:10
- 特別講演:「低酸素環境や暑熱環境を活用したパフォーマンス向上の試み」
- 講師:後藤一成 教授(立命館大学)
最初の特別講演は時間も長かったので、メモもちょい長め*2。
低酸素
- 低酸素環境での持久性運動では(動脈血酸素飽和度は下がり)血中乳酸濃度の上昇が亢進する。
- また、ミオグロビン(筋損傷の指標)は下がる。
- 2010年頃から状況が変わった。低酸素環境は有酸素性能力に加えて無酸素性能力にも効果がある。
- 1999年の研究で分かっていた。VO2 Maxは変化せず、運動持続時間が17%も伸びた。運動持続時間の改善と乳酸代謝能も改善した。
- 低酸素環境での間欠的な高強度のトレーニングにより、通常環境での間欠的なパワーが向上できる。
- 通常酸素群に比べて、低酸素群はピークのパワーだけでなく、セットを重ねてもパワーの下がり方が低い。
- 低酸素群は5日間だけのトレーニングでグリコーゲンが80%増えた(通常酸素群は55%)。
- 低酸素トレーニングにより
- 血液成分の改善(ヘモグロビンの増加)→体内での酸素運搬能力の向上→有酸素性能力の向上
- 酸素が少ない→酸素を使わずにエネルギーを産出する(解糖系)能力の向上→乳酸代謝性能力の向上(?)→無酸素性能力の向上
- 低酸素環境のトレーニングでは(発揮パワーは同じでも)筋グリコーゲンの利用が増加する。乳酸を産出する。
- 低酸素環境のトレーニングでは総ヘモグロビン(血液量の指標)が上がる。
- 低酸素環境で筋血流量が増える。運動後30分後、60分後でも高い。
- 低酸素環境が必要なのがネック。豊洲にアシックスが大規模な低酸素トレーニング環境を作ったが *3 。
低酸素を使わない低酸素トレーニング。低酸素環境でなくても低酸素に近いトレーニング(自発的低換気)をする。
- 呼吸を止めて8秒間運動→?秒間休息(息を吐いた後、通常呼吸)の繰り返し*4。
- 自発的低換気を用いることで、動脈血酸素飽和度が低下した(血液の低酸素化)。低酸素環境ほどではないが、手軽にできる。
- 研究を続けてトレーニング法を確立したい。
低酸素と暑熱
- 低酸素と暑熱でさらに筋血流量が増える。
- 低酸素と暑熱の組み合わせはこれから研究を進めて確認したい。
- 暑熱馴化トレーニング。馴化の効果は体温(深部温)の上昇を下げる、心拍数の上昇を下げる、皮膚血流を上げる、発汗量を上げる、血漿量を上げる。
- 暑熱馴化トレーニングはきついので、そんなに長くは続けられない。血漿量は短期間で効果があるので、これにフォーカスしている。
- 血漿量が20%増えるとすると、
- 静脈還流が増える→心臓からの1回拍出量が増える→心拍数の上昇が緩和される。
- 発汗→血液濃縮→筋肉への酸素運搬。
質疑応答
- トライアスロンの視点で種目により使う筋肉が違うが、低酸素トレーニングは他の種目への能力向上が見込めるか。
→特異性の原理*5に従うと、その種目でやった方がいい。バイクとランは相関がある。スイムは特殊な筋肉を使うので、相関が低いかも。 - 暑熱馴化トレーニングが血漿量が増える理屈が分からない(JTUのメディカル担当)。
→暑熱環境で運動すると発汗で脱水するため、結晶量が減る。運動後水とタンパク質摂取で逆に結晶量が増える。運動後のアルブミンが増える、組織の中の水が血管内に増えるためと思われる。血漿量の増加は2,3日で適応が起きる。運動後に大量に水を飲む必要がある。夏場だけでなく冬場でも。
所感
このトレーニング法でどういった回数を繰り返すのがいいかパターンを試したか質問をしたかったが、質問時間が少なかったのとおそらく試していなさそうだったので、質問はしなかった(できなかった)。
今日のオススメ記事
講演者の名前"後藤一成"でググったらこんな記事(アシックスの低酸素トレーニングジムの運営会社社長との対談)があったので、参考に。
今日のオススメ本
今日はこれ。低酸素のトレーニング本では面白そうなのがなかったけど、これは面白そうだよね。